無題


 SLY&THE FAMILY STONE『FRESH』より「In Time」。これと一作前の『暴動』を聴いて思うに、この人相当複雑なのかなと思う。まず何より音が内省的。派手さが全然ない。内にこもったような音になっているのは必然なのかな。『STAND!』なんかは快楽の追求が全面に出ているなと感じるけれど、『暴動』『FRESH』の2枚からはどうしても自己の内面と向き合わざるをえなかったスライの葛藤というか、もがき・あがきみたいなものの塊が音を通して全面に伝わってはきませんか?
 マイルスもさすがにびびったというドラッグの影響からかこの時期のスライは人格が破綻していたという。そんな状況からレコード会社は自宅に会社と同じレコーディング施設を用意してレコーディングを行ったみたいだが、そのような状況が如実に伝わってくる。60年代も終わり70年代に入っていくなかでの彼の心情と時代の変化を被せることも可能かな。そういう意味では時代と共に生きて、そして生き残った人なんだなと思う。たくさんの相反する二面性を持ち、決して強くはなかった人だったのかもしれないけれどそういう人柄が伝わる音ていうのはなかなか感動的なのですよ。